■逸品 【鼈甲-べっこう-】

DSC_0040 鼈甲(べっ甲)は、海亀の一種である玳瑁(タイマイ)の甲羅が原材料です。タイマイはカリブ海やインド洋など赤道近くの暖かい海に生息し、大きいもので甲羅の長さは1m以上にもなります。タイマイの甲羅は温めると自由に曲がるという特性があり、また複雑な構造をしているため、人工では製造は不可能です。1993年、ワシントン条約により甲羅の輸入が禁止されました。よって現在は1992年以前に輸入したべっ甲を使用しています。


■べっ甲の価格は色や透明度によって変わり、黄色い部分が多いほど、また透明度が高いほど高価になります。
もちろん使用する量が多いほど高価になります。
べっ甲は色合いや斑(ふ)の入り方によって名前が付いています。 代表的なものをご紹介いたします。

DSC_0040 【白甲】-しろこう-
尾の回りの4枚の爪甲(尖った三角形の甲羅の裏)から作られます。黄みがかった深い透明感は、変わるものがないほど美しい。透明感を出すのは熟練の技を要し、採れる量が少なく希少価値も高いため最高級とされています。
DSC_0040 【白茨甲】-しろばらこう-
背中の甲羅の白い部分を集めて作られることもある弱冠の斑が入ったべっ甲です。べっ甲の雰囲気が出るということで、白甲より好まれる場合もあります。
DSC_0040 【上トロ甲】-じょうとろこう-
背甲から作る濃淡の弱いものをトロ甲といいます。トロ甲の中でも一番赤っぽいものを上トロ甲といいます。
DSC_0040 【中トロ甲】-ちゅうとろこう-
背甲から作る濃淡の弱いものをトロ甲といいます。上トロ甲の次に赤っぽいものになります。上品にお顔に馴染む色合いです。
DSC_0040 【並甲】-なみこう-
トロ甲に比べて黒っぽいものが並甲です。べっ甲は、やはり色が薄い方が高価となります。


タイマイの甲羅について

DSC_0040 1.首甲 背甲の一番上の甲羅1枚。
2.背甲 亀の背の中心の甲羅で4枚。
3.舟甲 首甲の両脇に1枚ずつ計2枚。
4.本甲 背甲の両脇に2枚ずつ計4枚。
5.袖甲 本甲の両脇下に1枚ずつ計2枚。

首甲・背甲・舟甲・本甲・袖甲の色は淡黄色と暗褐色の「はん紋」があり、淡黄色が多いほど高価。


DSC_0040 背中側の甲羅の中でも綺麗な「はん紋」が多い部分、淡黄色の色合いが多いか少ないかによっても価値が変わってきます。

また、4枚の爪甲の裏からしか取れない爪裏(白甲)は、薄い上に何枚も張り合わせる必要があるため、大変希少で高価ものとなります。




製作例

DSC_0040 ■当店の顧客には、鼈甲枠が似合う年配の医師が多く、長年に渡って眼鏡を使っているならば、眼鏡の最終到達点である鼈甲枠のご要望もございます。また、今使っているセルフレームと同じデザインで鼈甲にてオーダー、店頭にあるフレームまたは、お客様がお持ちになったフレームを見本としての御注文方法もできますし、縁なしフレームの両テンプルを鼈甲にしたり、耳にかかる先セル部分を鼈甲で別作することも可能です。基本的に鼈甲は、地金部分をK18・K14WGで組んだ方が相性が良いです。チタンで組んだ場合、通常の眼鏡で蝶番やネジ部分に起きる緑青(緑錆)の問題が関係してきます。

※色見本下の№をクリックすると、デザイン画像を見る事ができます。


「人」だけでは伝統を未来に繋げられない
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べっ甲製品の材料となる甲羅は輸入が禁止されているため、現在の国内にあるものを使用しています。タイマイの養殖も試されていますが、先行きは不透明。そのため後継者が取りにくい産業であること。

【広報としま 】 10月号で、江戸べっ甲、江戸象牙の伝統工芸がピックアップされています。


べっ甲 色見本  /  デザイン見本
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べっ甲 製作 -70代男性- 
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色見本ですと№9の綺麗な中トロ甲に
なります。
70歳という年齢との相性がとても良
い、若々しさと上品さを兼ねた色合
いです。                                   

べっ甲 製作 -80代男性-
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この店品を見本として同じデザインで白甲をオーダー(前側) この店品を見本として同じデザインで白甲をオーダー(後側)


オーダーした白甲です。
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色見本№2最高級白甲です。見た目の色からオレンジ甲とも呼びます。 年数を経ていく事で赤みが薄まり、白みが増してきます。製作期間は1ヶ月~2ヶ月かかります。
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丁番は、18金を使用。こうする事で緑青(緑錆)を防ぐことができます。

べっ甲 先手別作 -80代女性-
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べっ甲色見本№7


K18ナイロールフレームの先手をべっ甲に
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べっ甲色見本№7の材料を揃え、初めに付いている先セルよりも若干太く作ります。これは後々に「磨き」を行った時、薄皮一枚剥いて傷等を取り除き、綺麗な元の艶を復元させるため、べっ甲先手はやや太く作ります。 K18との相性がとても良い一生物、№7の甲色は白い部分が多い上トロ甲です。女性らしいとても綺麗な甲色です。年月を経て体温により御自身の耳と頭の曲線に左右それぞれが馴染んでくるのもべっ甲の特徴。


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男性用べっ甲フレームの一部分を加工し直して奥様の眼鏡の一部へと
移し替えたり、新たに購入したフレームの一部分をべっ甲にしたり、
眼鏡の創作ができます。お見積もり、ご相談は無料です。               



べっ甲の磨き・修理例

甲羅そのものは薄いため、べっ甲フレームは、熟練の職人が水と熱で何枚も張り合わせて眼鏡フレームを作っていきます。もし、折れたとしても甲の色目を合わせて修復(継ぎ足し)が可能です。長年使用していくと艶が失われていきますが、総磨きを行って元通りの艶を取り戻す事が可能です。

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長年使用のチタン鼈甲。   
ブロー(眉)の研磨前です。
研磨後(右眉)手作業の
研磨により、完全に光
沢が復元しています。
研磨後(左眉)眉のいび
つな部分もなくなり、
チタン枠の光沢もだし
ました。                  


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研磨前の先手。直接肌
に触れる部分は特に白
っぽくなり完全に艶が
消えてしまいます。   
研磨後。変色やキズも
残っていません。      
※鼈甲には磨く方向が
あります。               
手折れの継ぎ足しです。甲の
色目を合わせて元通りになり
ます。                             


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最高級白甲の手折れ修復。 鼈甲の場合は、折れた所を
接着するのではなく、赤線
枠のように折れてる箇所の
前後2cm程を切ります。   
切った分と同じ長さの白甲
を接ぎます。2cm継ぎ足す
だけでも大変な手間が掛か
りますので、お客様の手元
へお戻しするまで2週間。


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トロ甲 磨き前 トロ甲 磨き後
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並甲 磨き前 並甲 磨き後


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虎鼈甲柄【虎甲】 虎甲 磨き前 虎甲 磨き後
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右手先のヒビ割れ
修復前
右手先のヒビ割れ
修復後(磨き含む)


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上トロ甲 磨き前 上トロ甲 磨き前 上トロ甲 磨き前
テンプルには細か
なキズもあります
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上トロ甲 磨き後 上トロ甲 磨き後 上トロ甲 磨き後
細かなキズもなく
なります


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上トロ甲 修復前 上トロ甲 右テンプル
修復前
上トロ甲 右テンプル
内側のヒビ割れとキズ
上トロ甲 左テンプル
修復前
上トロ甲 左テンプル
内側のヒビ割れとキズ
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上トロ甲 修復後
研磨済み
上トロ甲 右テンプル 修復・研磨済み 上トロ甲 左テンプル 修復・研磨済み


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両クリングス(鼻足)折れ
白甲・並甲との2色仕上げ
大変珍しい貴重な品です。
左右の鼻足が折れてしまっ
ています。
別のフレームから取り外し
た鼻足を移植します。同じ
金製品同士は金ロウで可。
磨きもおこないます。擦れ
もあり、艶もなくなってい
ます。(右テンプル)
右テンプルのアップ
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磨きもおこないます。擦れ
もあり、艶もなくなってい
ます。(左テンプル)
左テンプルのアップ
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両クリングス(鼻足)移植
と、磨きが完了。(前側)
両クリングス(鼻足)移植
と、磨きが完了。(後側)
右テンプルの磨きが完了。 左テンプルの磨きが完了。


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白甲磨き前 右手艶消え、擦れ 左手艶消え、擦れ
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白甲磨き後 右手艶消え、擦れ修復後 左手艶消え、擦れ修復後


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上トロ甲・白甲コンビ磨き前 右手艶消え、擦れ 左手艶消え、擦れ
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上トロ甲・白甲コンビ磨き後 右手艶消え、擦れ修復後 左手艶消え、擦れ修復後


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並甲艶消え、磨き前 テンプル開き調整前 右手艶消え 左手艶消え
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並甲磨き後 テンプル曲げ緩く調整後 右手磨き後 左手磨き後


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茨甲(バラ甲)の左手付け
根の修復と、全体磨きを行
います。
埋め込んである付け根から
抜けてしまいました。
「右手」小キズも多く、艶
も消えています。
「左手」小キズも多く、艶
も消えています。
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付け根から抜けてしまった
左手を修復しました。
「右手」小キズの処理と磨
きが完了しました。
「左手」小キズの処理と磨
きが完了しました。
前枠、両手を含む全体磨き
が完了しました。



オール白甲のリノベーション

海外に居住されている方からの御依頼です。来日した際、国内で購入した白甲をかけた時に鼻の幅が合わず、かけ心地が良くないため、右と左のレンズの間隔を広く出来ないだろうか・・という御依頼。

海外の方は男性も女性も鼻が高いです。眼鏡フレームは、ブランド品であっても国内の企業がパテント使用料を支払い、日本人向けにサイズ調整して製造され、「made in japan」として眼鏡店に卸されるのが普通です。べっ甲枠も基本的には外国人向けには作られていないので、海外の方が購入した場合は日本人向けの狭い鼻幅が障害となるでしょう。


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右リムが切れてしまっているので
修復の御依頼。そして、右レンズ
と左レンズを繋いでいるブリッジ
幅を広げられるか?という御依頼
リムの修復は特に問題ありません
が、ブリッジ幅を広げる修復は初
めての事なので、べっ甲職人と相
談した結果、現在のブリッジは切
り取って、新たに広くしたブリッ
ジを移植する方法を行います。
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鼻幅21.0mmの店頭品
をかけていただきました。
この鼻幅がしっくりくると
の事。これは日本人には広
すぎる鼻幅のフレームです
今までのブリッジは切り取
って、新たに幅を広くした
ブリッジを作りました。   
鼻幅がしっくりきたフレー
ムと、完成品を比較。同じ
幅に仕上りました。         


関連リンク
べっ甲の磨き・修理、金製品の修理